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 揺るがないもの、譲れないもの

 突如出現したアラガミ、アルダノーヴァの急襲により、旧日本近海に建設中だったエイジス島は半壊、同日、エイジス計画を強力に推進していた当時の極東支部支部長、ヨハネス・フォン・シックザールが、エイジスの崩落事故により死亡。
 フェンリル本部によるそんな「公式見解」と共にアーク計画は粛々と闇に葬られた。

 あの戦い、否、敗北から一カ月が過ぎた。
 支部長との戦闘で受けた傷は大きく、ヒデオでも傷を癒すのにそれだけの時間がかかった。
 全身に転移したオラクル細胞の摘出、大量の薬剤投与、中でも特に汚染の酷かった右腕は切断しなければならなかった。
 病室のベッドの上で、ヒデオは甲殻類が纏った殻を身体に馴染ませるように何度か義手の拳を握ったり開いたりしてみた。
 違和感はない。
 病室のドアがノックされサカキがアリサを伴って入ってきた。
「腕の調子はどうだい?」サカキが尋ねる。
「日常生活で使う分には問題ないですね。部隊に復帰するにはもう少し時間がかかるかもしれませんが」
「生体義手は拒絶反応が出ることが多いけれど、君に関しては余計な心配だったね。オラクル細胞をコントロールしている人間にその程度の拒絶反応を押さえられないはずがない」
 アリサは大きくため息をつくと、
「まったく、あなたは復帰するつもりなんですか? 呆れちゃいますよ。見た目の傷は治ったかもしれませんが、中身の方はボロボロなことくらい私でも分かります。ちゃんと休まないといけないですよ」と言った。「それに博士もなにさらっと流してるんですか」
「彼に何を言っても止められないことは分かっているからね。私は私にできることをするだけだよ」
「そうかもしれませんけど、でも……」
「少し、一人にさせてもらえませんか」ヒデオは神妙な顔つきでそう言った。
「……ヒデオ……」アリサが心配そうにヒデオの顔を覗き込む。
「大丈夫だから」
「ああ、今日はあの日だったね。すまない、出直してくるよ」
 サカキはアリサを連れて病室から出て行った。
「潰してやるさ、どんな手を使ってでも」ぽつりと呟いてヒデオは両目を閉じた。

 ヒデオはフェンリル上層部の人間と対談をしていた。
「今日皆さんに集まってもらったのは他でもない、アーク計画についてお話ししなければならないことができたからです。端的に言って、アーク計画を凍結する必要が生じました」
 ヒデオ以外のメンバーが怪訝そうな顔をする。
「君は、アーク計画支持派ではなかったのかね?」上層部の一人がヒデオに訊いた。
「はい。僕はアーク計画支持派です。だからこそ、凍結の必要性を主張します」
「どういうことかね?」
 ヒデオの目がついっと狭まる。
 その隙間から覗くのは血よりも昏い赤。
「これはまだ公式には発表していないことなのですが、アラガミの中には人間に寄生したり、擬態するタイプのものが存在することが明らかになりました。僕がこの目で確認したのでこれは確かな情報です。現在のところ、人間かそうでないのか判別する手段はありません。僕の遭遇例は暴走した神機使いを処理した際にたまたま分かっただけで、あくまで“殺してみた結果そうだった“だけです」
「ならばなおさら計画を急がねばならんのではないか?」太った男が髭を擦りながら言った。
「いいえ、そうはいきません。考えてみてください、アラガミと同じ船に乗るということはアラガミと同じ密室に閉じ込められるのと同義です」
「だが、こちらにも神機使いは山ほどいるだろ? 殲滅は難しくはない」
「確かにアラガミ自体を倒すのは難しくないかもしれません。しかし、場所は宇宙船の中です。隔壁に一つでも穴が開けられればアウトです」
「そんなもん確率たいしたことないだろ?」
 金髪の眼鏡をかけた青年が挑発的に言った。
「第一、お前が見ただけで物的証拠なんてないしな。ここまで計画を進めるのは結構骨が折れたんだぜ、そんな簡単に中止できるわけないだろ」
 この男は前の対談のときはいなかった。
 大方僕と同じで他人を蹴落として出世したタイプか。
 なかなかのリアリストのようだが、こっちだって一カ月間何もせず過ごしてきたわけじゃない。
 リアリストなら現実を現実で上書きされれば認めざるを得ないはずだ。
「物的証拠ならあります」
 ヒデオは挑戦的にそう言って、持ってきたギターケースのようなものを開け、中から透明な立体を取りだした。
 中心には人の腕のようなものが封じられている。
「これは……」
「遭遇時に採取したアラガミの身体の一部です。だいぶ変異してしまっているのでDNAを調べても個人を特定することはできないでしょう。元人間だったことくらいは分かると思いますが」
 勿論、そんなアラガミがいるというのはヒデオの嘘である。
 腕は支部長のものだ。
 ヒデオは挑戦的に金髪青年に笑いかける。
 彼はおそらく他の上層部の人間から好かれてはいないだろう。
 故にここで叩いておく。
 人は共通の敵を作ることで容易に一致団結できる。
 せいぜい利用させてもらおうか。
「それに一パーセントでも可能性があるのならその一パーセントを埋めてから計画を実行すべきです。人の命に代えはありませんし、計画の実行自体はそれほど時間はかかりません。アナグラにいれば時間稼ぎの”餌”にも事欠きませんから」
 ヒデオは意地が悪そうににやにやと笑ったが、握りしめられた拳はふるふると震えていた。
「いいですか、一番大切なのは皆さんの命です。それは僕にとってもです。ここまでの関係を築けたのに今それを失うのは痛すぎる」

 上層部の人間達が集まりぼそぼそと何か相談しだした。
 ヒデオは黙っていた。
 胸が杭でも打たれたように痛かったけれど、それを悔いることもそれを撃たれることもそれを悼むことも今の自分には許されない。
 僕はどんな手を使ってでも……。
「やはり彼が妥当なのでは……」
「確かに彼以上に我々に有益な人物はいない……」
「しかし、十五歳というのはあまりにも……」
「重要なのは年齢よりも思想だろう……」
 やがて相談が終ったらしく、一同が席に戻った。
「ヒデオ君、君をフェンリル極東支部の支部長に任命する」上層部の一人がそう言った。
「十五歳で支部長というのは異例中の異例、特異中の特異だが、君の功績と能力から判断し十分に支部長が務まると我々の意見が一致した。君にはシックザール前支部長の後任として働いてもらいたい」
「しかし……」
「心配しなくていい。支部長になればかなりの権限を表側で発揮できるさ」
「おいおいあんたら、そんなにそこのガキ信用していいのかよ?」金髪の青年は言う。
 一人くらいは否定的な奴がいた方が自然なのでヒデオはあえて反論しない。
 男の一人は鼻で笑うと、
「君よりは信用できるさ」と言った。
 周りの何人かが笑う。
 この流れを使わない手はない。
「しかし、彼のように否定的な意見を持つものも少なくはないと思います。要らぬ嫉妬を買うかもしれませんし、そうなると皆さんに迷惑がかかるのではないでしょうか?」
「それは問題ないさ。君が我々の下で働いてくれてからは一度も失敗したことはないし、他のものもその事実を否定することはできまい。なにより、君と敵対したいと思うものも今ではいまい」
「そうですか。なら権限だけいただきます」
「支部長の座だけでは不満かね?」
「いえ、そうではなく、戦場から離れたくないだけです」
「どういうことだ?」
「これまで通り僕を第一部隊隊長として扱ってください。これは白い悪魔対策です。僕なら奴を倒せると思いますが、というより僕ぐらいしか奴に勝てる者はいないでしょう。しかし、平和ボケしてしまって勝てる相手ではないでしょうし、監察官の役目も同時に果たせますから」
「相変わらずえげつないな、君は」
「それぐらいが丁度いいよ」
「では、表向きはペイラー君を支部長にすることにしよう」
「シックザール君は随分頭の固い男だったが、君はもの分かりはいい方だろう。期待しているよ」
「ありがとうございます」
 ヒデオは一礼すると退室した。
 ベテラン区画の自販機の前でへたり込みながらしるこを飲んでいるとサカキに出会った。
「かなり参っているようだね」
「支部長はほんとにすごい人ですね。こんな思いをしてまで、誰かを救おうとした」
「それは君も同じだろう?」
 ヒデオは曖昧に笑った。
 しるこをがぶ飲みし、大量の糖分を取っても苦さがとれない。
 何でこんなに苦いんだろう。
「支部長と出会って、戦って、なんとなくだけど自分が求めていたものが分かった気がしたんです。これから先、迷うことも行き詰ることもあるかもしれない。それでも、諦めることだけはしない」ヒデオは立ち上がると、「もう行きます」と言った。
「君はひどく不器用だね」とサカキは言った。
 


 
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 継がれる想い

 ぼやけた意識の中でヒデオは注射器を手にした。
 右腕の感覚がまるでないので代わりに左手で注射を打つ。
 薬剤が血流にのって身体の隅まで行きわたると、今までバラバラだった思考回路が少しずつ回復していき、自分が立たされている状況を把握することができるようになった。
 それでも、床に倒れていることがひどく魅力的で立ち上がる意思を持てない。
 しばらくするとアリサに次いで他の第一部隊の面々も結局戻ってきた。
 みんなバカばかりだ。
 人の気も知らないで勝手なことをして。
「ファウストさん……」
 思わず彼の名を呼んだ。
 ヒデオはボロボロの身体とボロボロの心で精一杯笑った。
 支部長の膝が折れ今度は彼の倒れる番だった。
「ば、ばかな……この私が……」支部長は苦しそうに首を押さえて、「人の業からも目を背けるこんな愚か者どもに、敗れるなど……」
 ごほっと咳き込み身体を痙攣させると支部長は顔から地面に崩れ落ちた。
 コウタがノヴァの方を見ながら、
「はあはあはあ、畜生、あのデカブツ……、止まらないよ!」と言う。
「いったい、どうしたら……」
「あきらめないで! きっと何か……何か方法があるはずよ!」
 戸惑うアリサにサクヤが檄を飛ばすが、彼女自身も不安からか声が震えていた。
「ふ…ふふ…無駄だ。覚醒したノヴァは、止まらない……」
「この私が珍しく断言する……不可能です」
 支部長の不遜な発言にサカキも同意した。
「何とかならねえのか博士!」ソーマがサカキに訊く。
「残念だが支部長の言った通りだよ……」
 サカキも諦観の念で首を振った。
「あふれだした泉は……、ノヴァが止まることは……ない」
「そんな!」
「アラガミの行きつく先、星の再生。やはりこのシステムに抗うことはできないようだ……」
「ふざけるな!! そんな事、認めねえぞ!!」
「……そう。それでいいのだ。ソーマ、お前たちは…早く、箱舟に……」
「支部長……あなた……もう!」サクヤが言う。
「……余計な心配は無用だ……。もとよりあの船に私の席は…」
「それがあるんだよなぁ」
 神機を支えにして立ちあがったヒデオはいつも通りの不敵な笑みを浮かべてそう言った。
 指に挟んだチケットをひらつかせて見せる。
「僕が持ってるチケットは二枚。普通に貰えたやつとあんたから特別に貰ったやつ。僕は二枚のチケットを持ってるんだよな」
「あれは君の知人にでも渡したのではなかったのか?」
「言ってなかったけ? 助かるなら……二人ともだって」
「ヒデオ君、君はどこまで……。だが、残念だが君の好意に私は応えられない。私の席はないんだよ」
「支部長、どうして……」サクヤが訊いた。
「フフ……、世界にこれだけの犠牲を強いた私だ。次の世界を見る資格など無い。後はお前達の……仕事だ……フフ、適任だろう?」
「それをあんたに強いたのは世界の方じゃないかっ! あの痛みも、あの悲しみも、あの辛さも、あの苦しみも、全部あんたがみんなの未来のために一人で抱え込んだんじゃないか」
 ヒデオはかぶりを振る。
 その瞳はいつになく澄んだ緋色の輝きを放つ。
 まるで命を燃料にして燃えているかのように。
 支部長はヒデオの言葉を呑みほして、
「君は、本当に……。できることなら、私も君と同じ世代に生まれたかったよ」そう溢した。
「親父……」
「アイーシャ、すまない。私達は結局こんな争いの先にしか答えを探せなかった。私達は、君に償えたといえるのだろうか……」
「母さん……ノゾミ、ごめん……約束守れなかった」
「終わらせない。こんな結末は認めない」ヒデオは呟いた。
 変わりたいと思った。
 変わりたいと願った。
 変われるだろうと思った。
 変われるだろうと信じた。
 ヒデオは支部長を取り込んだアラガミの中に無造作に右腕を突っ込む。
 その瞬間、今まで何も感じなかった右腕に、強塩基の液体に触れ溶け出したかのような痛みが走る。
「はああああああっ!」
 それでもヒデオは歯を食いしばり支部長の身体を外へと引きずり出した。
 はあはあ、と息を切らせながらヒデオは支部長の顔を覗き込む。
「最後に君のような人間に出会えて良かった……」
 支部長は微笑みながら息を引き取った。
「……支部長……」とヒデオは彼の手を掴んで「あなたの想いは僕が継ぎます」と言った。
 後はノヴァのほ……ほ、ほ……。
 ヒデオの頭と身体が電池の切れたおもちゃのように停止した。
 ぐしゃり、と倒れる。
 限界だった。
 今まで無理に無理を重ねてきた身体が、そのつけに音をあげた。
 目の前が真っ赤になる。
 誰かに名前を呼ばれたような気がしたが、誰に呼ばれたのかは分からなかった。
 そこで僕の記憶は終わっている。
 その先は分からない。


 拍手してくださる方、
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 死闘の果て

 地表を焼き払う光にも風を捕えることはできない。
 地上を薙ぎ払う刃にも風を捕えることはできない。
 ヒデオは舞うように戦い、踊るように闘う。
 それはどこかで見たことがある光景だった。
 その演舞は最強の神機使いと謳われる白い悪魔と同一のもので、ヒデオはそれを完璧に再現していた。
 人の限界を超越した動きをアラガミ化した肉体が可能にしたのだ。
 開き始めた力の差に支部長は苛立ち右の拳を振り下ろすが、ヒデオはそれを左腕一本で受け止めた。
 圧倒的体格差をもってして起こった現実に支部長は息を呑む。
「……な、んだと……」
 しかし、実際はそうではない。
 ぱっと見そう見えるだけで、事実はその逆だった。
 ヒデオの目から血の涙が頬を伝い、破けた上衣の下には植物が根を張るようにオラクル細胞による浸食された身体が見て取れ、流血が止まらない。
 ヒデオは外からではなく内からのダメージに満身創痍だった。
 それでも、ヒデオは不敵に笑い自らの優位を飾って見せる。
 お互いそろそろ限界か。
「そろそろ終わりにさせてもらいますよ」
 そう言ってヒデオが神機を構え飛びかかろうとした時だった。
「――――待って!」
 アリサが二人の真ん中に立ちはだかったのだ。
「どうして君がここにいるっ!」ヒデオが怒声を浴びせる。
「支部長も、待ってください。ヒデオはあなたを助けるために戦っているんですよ」アリサは支部長に向けてかぶりを振る。
 そして、サカキから教えられた真実を支部長に語った。
「アリサ、そこをどけ。そのままじゃ君まで汚染される」
 アリサの登場に一瞬だけ気を取られヒデオに生じた隙を支部長は見逃さなかった。
 支部長は腕を振り上げ、振り下ろした。
 人間を殺すにはそれだけの労力があれば十分だ、とでも言わんばかりに。
 だけれど、ヒデオもみすみすそんなことはさせはしない。
 とっさにアリサの前に回り込み神機で一撃を受け止めるが、耐えきれず乾いた音を立て左肩の骨が砕ける。
「……う、……」とヒデオの口から苦悶の吐息が漏れる。
「――――――――」
 そのとき支部長が何かを呟いた。
「――――君だって結局は誰かを助けるために自分を犠牲にするんじゃないか。今の一撃、アリサ君を見捨てれば私を殺すだけの時間があったはずだ。それにも関わらず君は一切の迷いなく彼女を守ることを選んだ」
 アリサは身を乗り出すと、 
「そうです。私は博士からソーマの話を聞きました。ヒデオだってあなたと同じなんです。人の未来のために自らの犠牲を省みない。私達は戦わなくてもいい。話し合いで分かりあえるはずです」
 だが、そのアリサの言葉がヒデオの表情に暗い陰を落とさせた。
「違うんだよ。僕は支部長とは違うんだ。僕にとって、その他大勢なんてどうでもいいんだ。たまたまやってたことがみんなの役に立っただけ。僕が戦うのは人類をアラガミの脅威から救うためじゃない。僕は……、僕はね、仲間達の命が狂った老人の道楽のためでなく人類の未来のために必要な犠牲だったということを証明したかっただけだ。いや……、それさえ偽善だ。僕はただ自分が味わってきた地獄が世界を救うために必要だったのだと思いたいだけだ。僕は支部長のように、自分を犠牲にすることなんて、できはしない」
 血を吐くように言葉を紡ぐヒデオは酷く儚そうだった。
 少しでも目をそらしたら消えてしまいそうなぐらい淡く脆そうだった。
 にもかかわらず、そのヒデオをアリサは思い切り殴りつけた。
「あなたの今の仲間は私達でしょう。仲間を失うことの辛さを知ってるあなたがそれを私達に強いるんですか。あなたがいなくなった後に私達がどんな気分になるか分かってるくせにそんな我がままを言うんですか」
 それは、誰よりもヒデオを思っての怒り。
「みんなのために絶対に死んじゃ駄目です。それがみんなの願いなんだから」
 アリサが言ったのはいつかあの人、”自分を永遠の地獄から救ってくれた人”が言っていた言葉だった。
 光を失っていたヒデオの瞳に再び紅蓮の炎が灯る。
 助けたい。
 彼ならきっと、やり直せるはずだから。
 一番最初のボタンを掛け間違えて、全部のボタンを掛け間違えた僕とは違うから。
「だから、僕は支部長を倒す。倒してみせる」
 ヒデオは残された全ての力を込めた一撃で支部長を打ち倒した。
 そして、自らも地に伏した。
 ぼんやりとそのやり取りを見ていたアリサははっとすると、注射器をヒデオに渡した。
 最初ヒデオはアリサが近付くことを拒んだが、拒絶するだけの力もなかったので結局はアリサから素直に受け取った。
 
 
 

 拍手してくださる方、
 ありがとうございます。
 

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毒薬

 今一瞬意識が飛んでいたか。

 よりにもよってこんな状況であんなことを思い出すなんて、最悪だ。

 ヒデオの額からどろり、と血が流れ落ちる。

 目に入るのが鬱陶しい。

 ヒデオは何度も血を拭った。

 痛みを全く感じないのが危険だが、このレベルまでアラガミ化したことは初めてなので仕方がない。

 なんとかしこみも上手くいったし、あとはしばらく時間稼ぎをして様子を見ることにした。

 支部長の攻撃が少しずつ緩慢に見えるようになっていく。

 それに対し、こちらの攻撃の手ごたえは徐々にしっかりしたものになっていく。

 ヒデオは不敵に笑いながら的確にカウンターを極め、確実に支部長にダメージを与え続ける。

 支部長も一方的な展開に異変を感じたようだ。

「私に何をした?」

「さあ、何だろう? クイズの時間だ」

 ばらばらばらばら。

 長時間のアラガミ化によってヒデオの心が剥がれ落ちていく。

 ヒデオはだんだん自分が分からなくなっていく。

 僕は何をしているんだろうか?

 顔を苦痛で歪めながらヒデオは首を振り、

「アラガミを殺すのは神機だけではないということだよ」

「まさか……」

「そう、毒だよ」

「まさか……、いつ仕掛けた? そんな余裕があるはずがない」

「確かに余裕はなかったさ。ギリギリ上手くいっただけだ。あんたに一発食らったときに毒を仕込んだ」

 ヒデオと支部長の体重差、それを考えればそれはまさに賭けだった。

「今のあんたなら分かるはずだ。自分の細胞が死んでいくのが」

 

「博士、私に渡したいものって何ですか?」

「君はヒデオ君の過去を知っているようだから頼まれてくれないか」

 サカキはペンケースのようなものをポケットから取り出すとアリサに手渡した。

 アリサは好奇心からケースを開け中身を確認する。

 中には注射器のようなものが入っていた。

 見たことのないタイプだ。

「これは?」

「ヒデオ君が新兵器というものを準備していたのは憶えているね」

 アリサは頷く。

「その新兵器というのはアラガミ化を活性化させる薬だ」

 サカキの言葉にアリサの心中が激しく揺さぶられる。

「待ってください! ヒデオは……、ヒデオは……。あんな風に生きてきたのに。他には生きる道がなかったのに……。どうして……どうして博士はそんな酷いことをヒデオにするんですか?」

 アリサが熱くなりサカキの胸ぐらを掴み言い寄った。

 サカキは視線を落とし答える。

「僕だってそんなことしたくなかったさ。でも、彼が、ヒデオ君が望んだんだ。守りたいものを守れるだけの力が欲しいと……」

「……でも」

「だから僕はヒデオ君が一パーセントでも多く生きられるよう力を尽くした。その結果がオラクル細胞を破壊し、人の細胞を修復する薬、アラガミ化抑制薬だ」

「え? ならどうしてヒデオに直接渡さなかったんですか?」

「彼にはひとつ渡したさ。その予備がそれだよ。ヒデオ君に二つとも渡したら、彼はヨハンに……、支部長を助けるために二つとも使ってしまいそうだったからね。ひとつは僕が手元に置いておくことにしたんだ」

 アリサは膝が折れその場にへたり込んだ。

 ヒデオのことが分からない。

 あんなに同じ時を共有したのに結局自分は彼の本当の気持ちを理解できていなかったというのだろうか。

 そんなのってないよ。

「ヒデオ……、どうして……そんなことするの……」

「俯いている時間はないよ。それを彼に早く届けてあげなさい」

 アリサは立ち上がり駆け出した。



 拍手してくださる方、
 ありがとうございます。
 追記にて、
 timeroll さん、HITOKIさん、NC Muroさん、中庸さんにコメント返信があります。
 今回はたくさんのコメントをいただきありがとうございます。

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 それでも剣を

「それでもお前は神機使いであることを選ぶのか?」と青年は言う。
「それでも僕は神機使いであることを選ぶんだ」と少年は言う。
「何のために?」
「みんなのために」
 なんとはない会話。
 それはどこにでもあるような自然で、それはどこにもないような無機質な問答だった。
 
 僕と白い人はフェンリル東欧支部を後にしてから、徒歩で別の支部を目指した。
 潰した支部から列車に乗った日には即行で足が着いてしまいかねないので、僕が徒歩での移動を提案したのである。
 白い人は、
「大丈夫だって、バレたとしても俺とやり合おうって奴はいないから」
 とか言っていたが、彼も戦闘能力が高いだけで普通の人間だ。
 毒でも盛られれば死ぬことに変わりはない。
 そうやって野宿をしながら、何度目かの夜のときだった。
 僕が焚き火に薪をくべていると、のそのそと彼がテントから出てきた。
「交代までまだ時間がありますよ」
 彼は頭を掻きながら、
「なんだ、その……、壁っていうのか。その、距離がおかしい」
「何がおかしいというのですか?」
「そう、それだ。お前と他人との距離のことだな」
「それが何か?」
「そうだな、坊主、名前は何ていうんだ?」
「川村……ヒデオですが。……ああ、そういうことですか。」
 僕は彼の言葉の意味を理解した。
「そういうことならお訊きします。おじさんの名前は?」
「ばかっ、俺はまだそんな歳じゃねえよ。お前から見たら似たようなもんかもしれないけど。ま、名前つーか呼び名かな。ファウストって呼ばれてるな」
「本名ではないのですか?」
「本名は忘れたよ」
 僕はぱちぱちと爆ぜる炎をぼんやりと見つめながら、
「そうですか」と言った。
 ファウストさんは僕の隣に座ると水筒から注いだコーヒーをすすった。
「お前は……、ヒデオはこれからどうするするつもりなんだ?」
「そうですね……。僕は神機使いとして生計を立てていこうと考えています」
「……それでいいのか? やっと他の選択肢を選べるようになったのに、今までと同じ道を選ぶのか?」
「はい。僕には他にできることがありませんから」
 僕は笑ったけれど、きっとその笑顔は引きつっていただろう。
「お前なら大抵のものは手に入れられると俺は思うんだけどな」ファウストさんは不思議そうに言う。
「そうですね、少し言葉が足りませんでした。はっきり言うなら、僕がみんなのために他にできることがないからです」
「みんなって?」
「死んでいった仲間達のことです。他に誰がいますか」
 ファウストさんの表情が一瞬だけ凍りついたような気がしたが、それは気のせいだったかもしれない。
 焚火の炎が陰影ををランダムに歪めているのだ。
「…………、そっか。なら俺が教えてやるよ。アラガミとの戦い方を」
「それは心強いですね。最強の神機使いと評せられる白い悪魔から戦術を享受できるのは光栄だ」
 その日からフリーランスの神機使いのファウストさんと僕との旅が始まった。
 そして、それは僕が十歳になるまでの二年間に亘った。
 十歳になった僕はフェンリル極東支部の神機使いの養成施設に入所した。
 去り際に彼から言われたのは、
「決して本気を出すな」という言葉だった。
 彼が言うには強すぎる力は利用されるだけだという理由だったが、僕にははなから”他人”のために本気で戦う気はなかった。
 そして、別れ際に彼から貰ったのは、
「”みんな”のために絶対に死ぬな」という台詞だった。
 どうして戦うのか、そう、死んでしまっては”みんな” のために何もできなくなる。
 本当、よく僕を見てるよなあ。

 それでも僕は剣を取る。
 養成施設に入った五年後に、僕はツバキさんと出会うことになる。

 
 
 
 拍手してくださる方、
 ありがとうございます。
 追記にて、
 motochさん、HIROKIさんにコメント返信があります。

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