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 コミュニティのお題小説です。テーマは「花」。

   花詩を詠おう ――ハナウタヲウタオウ――

 

 放課後の美術室から4分の3拍子のリズムのハミングが聞こえる。とても綺麗なメロディーだったが、日本人は一般的に4分の3拍子が苦手なので単なる音痴なだけかもしれない。

 僕は大儀そうに美術室の後ろのドアを開けた。

 窓辺の席に腰かけた少女がスケッチブックに絵を描いていた。

 少女の白磁のように白い頬を夕暮れが朱く染め、夕闇が少女の影を青く染めていた。

「随分機嫌いいじゃん」と僕は言った。

 皐月は僕に気付くと、鉛筆を置き笑った。

 無駄に可愛い友人の笑顔にどぎまぎしてしまう僕。

 皐月はカタン、と音を立てて立ち上がると、無防備に僕に一歩二歩と近付いてくる

 彼女が歩みを進めるたびに僕の心の振幅も狭まり、心臓は高い音で高鳴る。

 皐月が僕に触れようとした瞬間、僕は半歩後ろに下がり、右手を透明な壁につけるように前方にさし出した。

「ちょっと待て」と僕は言った。「人の服で手を拭くな」

 彼女の手は黒鉛で黒く汚れていた。僕も高校生なので、母親に制服を汚してくるな、とか言われるのは正直しんどいのである。

 それに、何より、アタックの惨劇を繰り返すわけにはいかない。

 皐月は「ちぇっ」と言うと、再びハミングを始めた。

 その曲はマスプロダクトされた曲ではないことは分かったが、音節が2オクターブ分くらいずれていたので曲名までは分からない。

 しかし、彼女の歌は上手かった。

 音痴なのに上手いとはどういうことなのか、とツッコミを入れたかったがそんなことをしても無駄なような気がしたので僕は何も言わなかった。

 世界にはいろんなタイプの才能があるのだろう。

「もうすぐ完成しそうなんだ」と皐月は椅子に座ると嬉しそうに言った。

「ふーん」と言って、僕は皐月のスケッチブックを見せてもらった。

「どうかな?」皐月は器用に鉛筆を指先で回しながら僕に訊いた。

「いいんじゃね」

 それは散っていく花弁の一片一片を目で追えるような見事な桜の絵だった。

 ペン回しといい、絵といい皐月は僕とは違ってマルチな才能の持ち主のようだった。

 詩を詠うことしかできない僕とは違って。

「最後まで描いちゃえよ。あと少しなんだろ? 僕なら待っててやっから」

 いいの、と彼女は訊いた。

 いいよ、と僕は答えた。

 それから5分ほどで皐月は絵を完成させた。

 僕は素早く皐月から半歩離れた。

「さり気なく人の服で手を拭くな」

「何気なくでも駄目?」

「駄目だ」

 いったいどこの世界に他人に自分の着ている服で手を拭かれて喜ぶ人間がいるのか、それはどんなフェチズムなんだ。いや、いるかもしれないけどさ。

「じゃあ、これならいいかな?」

 皐月は微笑み僕の手を握った。

 とても柔らかくて、小さくて、温かい手だった。

 僕は不覚にも彼女に見蕩れてしまった。

 そして、皐月と切り離された僕の手は黒く汚れていた。

 まあ、手は洗えば済むことなので別に目くじらを立てるほどのことでもない。

 それはさておき、

 そのとき僕の頭を占有していたのは、そんなくだらないロジックではなかった。

 もっと根源的で、根本的な感情だった。

 多分、僕は忘れないだろう。

 この日感じた温かさを、彼女と繋がったことを。

 彼女の世界の温かさと、彼女の世界との絆を。

 

 追記よりあとがきです。


 僕のコミュニティデビュー作品。

 用語解説。

 アタックが何か年齢的に分からない方もいらっしゃると思うので説明します。

 アタックとは衣料用洗剤の名前です。

 アタックの惨劇というのは僕の家の衣料用洗剤がワンクラス上のアタックに変わることの発端になった、恐るべき衣類汚染事件のことです。

 

 いつもよりネタ少な目、固めの中途半端な話になってしまいました。

 一体僕はなにを書きたかったのだろうか。

 それが分からないのが今後の重要な課題である。

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02/04|オリジナルコメント(1)トラックバック(0)TOP↑
この記事にコメント
No title
「アタックの惨劇」の詳しい話がしりたい!な気持ちでいっぱいのなゆたロコモです。

いいですねぇ。
なんか物凄くあったかーい感じの小説って憧れます。
さりげなく、何気なく服で手を拭こうとする皐月ちゃんがかなりツボです!!もういいじゃん!「それとなく」拭きにいっちゃえ皐月ちゃん!!!(ダメだ)

僕のお名前がでなかったのも個人的に気になりますねー
支障がなければ教えてくださいな。

トキワ様のコミュニティデビューがあたしのお題だった事、ちょっぴり嬉しいです。

最後に・・・
素敵なデビューおめでとうございます!!(え)

From: なゆたロコモ * 2010/02/06 00:05 * URL * [Edit] *  top↑
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