上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--|スポンサー広告||TOP↑

 くちづけは血の味

 先の戦闘で負傷したヒデオは医務室で眠り続けていた。
 その眠りは死者のように安らかで、静かに呼吸に合わせて上下する腹部だけが彼の生存を証明していた。
「このまま起きないってことはないよね……」ベッドサイドの椅子に腰かけていたアリサは心配そうにそう呟いた。
 他の第一部隊の面々は治療中で部屋で安静にしていろとのことだった。
 アリサも怪我は軽くはなかったが、こっそりと隙を見つけてヒデオの様子を見に来たのである。
「大丈夫だよ。今は力を使い過ぎて身体が衰弱しているだけだから。必要な栄養素は補充したから安静にしていればそのうち目覚めるはずだよ」ベッドを区切るカーテンをシャっと開けてサカキが答える。
 そう、アリサ達にアナグラに担ぎ込まれたヒデオはなぜかサカキに治療されたのである。
「博士は医学も修めてらっしゃるんですか?」と訊いてみたが、
「ん……んー、そうだね。彼はうちの切り札だからね。僕が自分で見ておきたいんだよ」
 と、微妙に曖昧な答えが返ってくるだけだった。
「……ヒデオ……」
「彼は僕が見ているから君も帰って休みなさい」
「いえ、もう少し……」
「そうかい」サカキは苦笑すると「若いというのはいいものだね」と言い部屋から出て行った。
 その台詞がもうおっさんである。
 アリサはしずしずとヒデオの寝顔を覗きこむ。
 漆黒の髪に青白い肌。
 緋色の瞳は閉じられ、ギラギラと輝く研ぎ澄まされた刃のような瞳は封じられ、そこにあったのは年相応の、あるいはそれよりもいくつか幼い顔だった。
 改めて思い起こされる彼と出会ってからの日々。
 ロシア支部にいたときはこんな気持ちになることなんてないと思っていた。
 その変化の起点になったのはいつもヒデオだった。
 普段の頼りなく冴えない感じの彼も、アラガミとの戦いのときの頼りがいがあり冴えわたった洞察力を持つ彼も。
 私は彼が――――――好きなのかもしれない。
 そう思うと、あまりにも無防備なヒデオに、触れてみたいと思った。
 いつかヒデオがアリサにそうしたように、今度はアリサがヒデオに身体を重ね二人の唇が触れ合おうとしたとき、やはり手が先に触れた。
 視界が明滅し大量の情報が脳に流れ込んでくる。
「……あ、ああ……」
 解析速度を遥かに上回るデータの量にアリサはパニックに陥った。
 これが感応現象。
 そういうものが存在するとあらかじめ知っていたアリサはすぐに冷静になることができた。
 データの質が悪く不鮮明なためアリサが読み取ることができたのは僅かなものだったが、しかしそれはヒデオが普段決して話そうとしない彼の出自によるもの。
 当然興味があった。
 ゆっくりと瞳を閉じてイメージを反芻する。
 実際には刹那な間だったが体感的には結構長かった。

 目に浮かぶのは今よりもかなり幼いヒデオ。
 そして、ヒデオの横にいる白い影のような人。
「どうしてフェンリルから抜けたんですか? 組織のバックアップがあった方がアラガミとの戦闘が楽になるし、死ぬリスクも減るじゃないですか?」ヒデオは問う。
「そんなもんに入っちまったらくだらない救いようのない救われようのない、くそったれどものために戦わなきゃいけなくなるからな。俺が守りたいのは力のない弱い人達なんだよ。その人達のために戦いたい、それが俺の神機使いとしての矜持だ」と白い影は言う。
「しかし、本部を固めて司令室を組んだ方がアラガミに対して有効な対策法であり、被害を最小限に抑えることのできる手段であることも事実です」
「そうかもしれない。それが正しいやり方なのかもしれない。だけどな、それじゃあ、なにより俺が救われない」
「あなたはバカだ。そんなやり方……」
 それであなたが救われたとしても、それではあなたが報われない。
 
 そしてまた、アリサとときを同じくしてヒデオもパニックに陥っていた。
 朝起きたら目の前に美少女が顔を覗きこんでいるのである。
 彼我の距離およそ一センチ。
 そりゃあ、驚きますよ。
 というか、美少女云々ではなく、普通そんな状況だと誰でも驚く。
 ヒデオは反射的に起きようとしたためにアリサと歯と歯がぶつかった。
 ファーストキスは血の味でした。
 ショック状態のヒデオはとにかく相手から離れなければ、とゴロゴロとベッドの上を転がり、反対側から落下し顔面を床に強打した。
 そこに、
「ヒッデオー、元気ー。いやあ、ついにゲットしたよー。”お兄ちゃん、メールだよー”着信音。これで俺も勝ち組だな」異様にテンションの高いコウタが入ってきた。「って、なにこの火曜サスペンス劇場的状況っ!」
 ヒデオはうつ伏せになり頭部は血だまりに浸っていた。
「いやいやいやいや、なんていうことはないんだよ。ちょっと転んで鼻血を出しただけだから」
 出血量的にぎりぎりの状態だがヒデオは言う。
 コウタはアリサの口元を見て、ヒデオの口元を見て、二人の口元に滲んだ血を確認して、
「えっ! お前らってそういう関係だったの? 俺もしかして負け組?」
 その着信音欲しいと思った時点で敗北者だということを悟れ。
「コウタがすごくはしゃいでいたけど、ヒデオが意識を取り戻したのかしら? って火サス?」とサクヤ。
「ちっ、人がわざわざ見に来てやったら、どこの殺人現場だよ」とソーマ。
「ヒデオが回復したというのは本当か? なんだこの血痕は。まさかアラガミが侵入したのか?」とツバキ。
「いやいやいやいや……」☓3
 ヒデオは給料完全歩合制のセールスマンの如く必死にというか、決死に一同に説明する。
 これは不幸な事故なのだ、と。
 皆の誤解を解き、地雷原を通り抜けたみたいな気分に浸っていると、アリサが不機嫌な顔で近付いてきて思いっ切り脛を蹴られた。
 乙女心は難しいと改めて思うヒデオだった。
 
 
 

 拍手してくださる方、
 ありがとうございます。
 
スポンサーサイト

07/22|ゴッドイーターコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
この記事にコメント
名前:
コメントタイトル:
メールアドレス:
URL:
コメント:

パスワード:
管理人だけに表示:
管理者にだけ表示を許可
この記事にトラックバック
FC2カウンター
現在の閲覧者数
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ドラクエ風xxxがあがった!
flash boreal kiss
プロフィール

トキワ

Author:トキワ
FC2ブログへようこそ!
にほんブログ村 その他日記ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

フリーエリア


ダンジョンRPG検定

最新記事
最新コメント
仁王立ちだZE★霧雨魔理沙
【東方】博麗ちゃんの賽銭箱
十六夜咲夜の大きな懐中時計
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
インなんとか
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム
QRコード
QRコード
最新トラックバック
地球の名言

presented by 地球の名言
黒メイド時計
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。