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 二人の策士

 どうやら私の動くべきときが来たようだ。
 今夜サクヤさんはエイジス島に侵入する気らしいが、一人で行かせるのはあまりにも危険過ぎる。
 私のせいでリンドウさんが死んでしまった以上、私が何もせずにいていいわけがない。
 私もサクヤさんと一緒に行かなければならない、いや、一緒に行きたい。
 しかし、たとえ二人でも心細いのは事実だった。
 そこでアリサはヒデオにも声をかけることにした。
 彼がいてくれたなら全てが上手くいく、そんな気さえした。
 彼の部屋へと出向く。
 アリサはヒデオと二人きりになれることに半ばドキドキしていたが、ヒデオは部屋にはいなかった。
(ここじゃないなら博士のラボかな)
 サカキのラボに行くと案の定、ヒデオは三色団子を食べながらゴロゴロしていた。
「ヒデオ、こんなところで何してるんですか?」
「え? 普通にくつろいでるんだけど」
 もっちゃもっちゃ。
「大事な話があります」
「うん、聞くよ」
 ヒデオはソファーに寝そべっていた体勢から立ち上がると、もう一度ソファーに座り直す。
 団子の串を後ろに投擲しゴミ箱へ。
「大事な話だから、ちょっとついて来てください」
「分かったよ」
 二人はラボを後にした。
 アリサは周りに誰もいないことを確認してから、
「サクヤさんが、一人でエイジス島に侵入しようとしています。私達もついていきましょう」と小声で囁いた。
「やだ」
「は? 今、なんて?」ぽかんとするアリサ。「えと、どういうことですか?」
「僕には僕でやらなければならないことがあるので一緒に行くことはできない、ということだよ」
「あなたは!」ヒデオの言葉に激昂したアリサはヒデオのよれよれの長袖Tシャツの襟を掴みかかる。「サクヤさんは仲間じゃないですか! 心配じゃないんですかっ!」
 ヒデオは辛そうに目を伏せたが、それは一瞬だけでその後には揺るぎない、揺るがない、強い目に変わった。
「それでも、僕にはやらなきゃいけないことがある。これは単純に優先順位の問題だ」
 どうして、そんなことを言うのだろう?
 なんで、そんなことを言うのだろう?
 誰よりも仲間思いの彼が何故?
 ……そんなことを。
 今迄も、ヒデオが何を考えているのか分からないことはあった。
 ヒデオの中身を見て、少しはヒデオに近付けたような気がしたけれど、それは私の錯覚だったのだろうか。
 散々逡巡したあげくに、
「……そうですか」としか言えない自分がいた。

 アリサはサクヤを尾行しながらエイジス島に侵入した。
 警備システムがダウンしているせいで、邪魔してくるのは自立型システムのセーフガードだけなので、片っぱしから片付けて行く。
「……これ……は?」
 大きなホールに出たサクヤが何かを発見し驚き動きが止まったところに迎撃システムのレーザーが放たれた。
 アリサは素早くサクヤの前に出るとシールドを展開しレーザーを弾き返す。
 敵の位置は視認できないが、射線上に迎撃システムが存在すると予測、神機のモードを銃に切り替え迎撃システムを破壊。
「……ふう! 危なかったですね」
「……アリサ」サクヤは驚く。
「ふっ……勝手に置いていった挙句、死んじゃったら笑い話にもなりませんよ!」
「あなた……」
 アリサは意地が悪そうに笑い、サクヤもその笑顔に笑い返す。
 自分よりも経験豊富なサクヤだがやはり一人は心もとなかったのだろう。
 足元の金網から謎の湯気がどんどん湧いてくることに微妙に気分が悪くなる。
(これ何のガスだ)
 二人がガールズトークをしていると、
「ようこそエイジスへ!」と不遜な声が聞こえた。
 この声は……支部長。
「やはり君達か。どうだろう、思い描いた楽園と違っていて落胆したかな?」
 何のために使うか意味不明な機械のアームに乗っかって支部長が登場。
 神機を肩に担いだサクヤが、
「支部長……、やはりあなたが……」と驚愕する。
 その隣でアリサは考える。
 どうして、支部長が襲撃したタイミングを見計らったかのように出てきたのか。
 ヒデオに言われた通り監視カメラ、盗聴器に対してこちらは随分気をつけていた、それなのにも関わらず、何故タイミングが読まれた。
 いや、そもそも襲撃することが分かっているならバグの修正をするはず。
 それなら、これは私達を逃がさないようエイジス島の深部まで誘き寄せたということなのか。
「なんで……」アリサの口から無意識に言葉が零れた。
「なんで、か。簡単なことだ。優秀な策士がいるのは君達の側だけではない。こちらにもいるのだよ、策士という人種が。おそらく、今もどこかで私達のこの会話を聞いているはずだ」
 アリサの神機から突然声が聞こえた。
「驚きました。そこまでお見通しでしたか。私の存在を看破しいているとまでは思っていなかったので、正直驚きました」
 その場にいる誰もがアリサの神機を注視する。
 どうやら超小型のスピーカーでも知らないうちに取り付けられていたらしい。
 声は加工されたものでその持ち主は判別できなかった。
「全然驚いているようには見えないがね」
「声ですから」
 スピーカーの向こうにいる”策士”は支部長に対しかなり挑戦的だった。
「ふっ、よく言う。雨宮リンドウが何らかのデータを残す可能性は十分に考えられたが、それにロックをかけるとは”時間”というロックをかけるとまでは思いつかなかった。上層部でもそこに注目した人間はそうはいまい。まったく厄介なものだな、君は」
「それは褒め言葉として受け取っておきましょう。そちらの会話も続けてください」
 思わぬ闖入者に場の空気が混乱したが、それは水面に落ちた雨粒のようにすぐに霧散した。
「支部長、これは一体どういうことですかっ!」サクヤは激しく支部長を問い詰める。
「彼はここに侵入する手はずまで整えていたのかね、サクヤ君?」
 ロボットアームが下りてきた。
 相変わらず何に使うのかよく分からない機械だった。
「実に惜しい……。まったく、実に惜しい人物を失ったものだ」
「戯言を! ……あなたが……そう仕向けさせたのね!」
 支部長は手を身体の後ろで組んだまま、
「ああ、その通りだ」と平坦に答えた。「彼にはどうやら違う飼い主がいたようでね。噛まれる前に手を打たせてもらった。……彼の行動は早過ぎた。終末捕喰の起動キーとなる”特異点”が見つかっていなかったあの段階では、まだ、アーク計画を知られるわけにはいかなかったのだよ」
 そう言った支部長はどこか悲しそうで、私は彼の言葉を黙って聞くことにした。
「アラガミが引き起こす終末捕喰により、この星はやがて完全な破壊と再生を迎える。完全なる再生だ。全ての種が一度完全に滅び、生命の歴史が再構築される。その新しい世界に、人類という種とその遺産を残すための箱舟。それがアーク計画だ。しかし残念なことに、新しい世界へ誘う箱舟の席は限られている。次世代へと繋ぐ限られた席だ。真に優秀な人間こそ座るべきだと思わないかね?」
「で、それに乗るのはあなたとあなたに選ばれた人だけってわけね」
「適役が他にいるかね?」支部長はそこで一度息を吐き、「本当に、そう本当に残念だがこれで君達二人はリストから外れてしまった。申し訳ないが、ここで消えてもらおう」
 そう言って支部長は腕を振り合図をしたが何も起きなかった。
「あら? 残念ながら、残りのセーフガードは私が全て破壊しましたけど?」
 自信満々に言ってアリサは前へ出る。
「そうか……、それは困った。では仕方ないので、二人で殺し合ってもらうとしようか……」
 部屋の奥から大車が出てきた。
「やあ、久しぶりだねアリサ。できればあのまま眠りについてくれればよかったものを……。そんなに殺し足りないなら、また手伝ってあげようね」
「なに……を……」
 大車はタバコを斜に咥えて、
「アジン、ドゥヴァ、トゥリー」と言う。
 その言葉を聞いたとたんに、アリサの頭の中に過去の記憶が迸る。
 殺すべき対象。
 その姿が明確に描かれていく。
 アリサは銃口をサクヤに向けた。
「アリサー!」とサクヤが叫びアリサの方に走りだす。「あなたはもうこんな暗示になんて負けない! だって、あの時も、あなたはリンドウを撃ちはしなかった! あなたははじめから、こんなものに負けてはいなかった! そう、大事な人を守る強さを、持っていたのよ!」
 一撃、サクヤの横を光弾が通り過ぎていく。
 更に近づきサクヤはアリサに飛びかかった。
「ふははははははは! 血迷ったかさくや!」大車が醜悪に笑ったが、目の前の光景に思わず声を上げる。「何!」
 サクヤは不敵に笑い、
「お生憎様、”回復弾”よ」と言う。
「な! しまった……!」
 サクヤが照明弾を放ち、突然の閃光に目を焼かれた支部長と大車は二人を見失った。
「面倒を増やしてくれる」支部長が珍しく舌打ちしそう言った。
 サクヤとアリサは必死に逃げた。
 駆け抜ける傍から通路の防護隔壁が閉じていく。
 入って来る時には作動していなかった警備システムが再起動されている。
 支部長の言っていた”策士”に先手を打たれてしまったようだ。
 隔壁の作動のタイミングが徐々に早くなり二人との距離を詰めていく。
 次はもう逃げられないかもしれない、という気持ちが焦りを呼びつるつると滑る床の上でアリサが足を挫き転んだ。
「サクヤさん、あなただけでも逃げてください」
「駄目よあなたも一緒に……」
 サクヤもアリサを見捨ててはおけずに足が止まった。
 その間に二人に追いついた隔壁は二人を分断しようと躊躇いなく下りた。
 けれど、途中で止まった。
「大丈夫ですか?」とアリサの神機から策士の声がした。
 機械で加工されていたけど、はっきりと分かるくらいに心配そうな声だった。
「あなた……」
「時間がないので用件だけ話します。この施設内にいるのは支部長と大車だけです。セキュリティは全部こっちで掌握しているので、そこは心配しなくて大丈夫です。多少の時間は稼げたのであなた達ならば独力での脱出も不可能ではないでしょう。しかしそれは、あくまで不可能でないだけで困難ではあります」
「……ヒデオ? ヒデオなの?」
 アリサの言葉を策士は無視した。
 超緊急事態です。
「さすがに信じてくれとは言いませんが、言ったところで何の根拠もないですが、私の指示に従ってくれるのならば、あなた方を絶対に安全圏まで逃がしてみせます」
「信じるわ」サクヤは即答。「私達を捕まえるのが目的なら防護隔壁でさっき捕まえられたはず。そうしなかったのは、あなたが個人的に私達を逃がしたいと思っているから、よね?」
「理解が早くて助かります」
「でも、何のためにあなたはこんなことをするの? バレたらただじゃすまないわよ」
「私達も一枚岩ではないということです。それに……」言いかけてやめる策士。「お二人とも死なないでくださいね」

 同じころヒデオはサカキのラボの大型ターミナルを操作していた。
 会話の必要がなくなったのでインカムを外す。
 ドアがノックされ部屋の主が入ってきた。
「ヒデオ君、上手くいったかな?」
「失敗ではないです。それよりこの本部から独立したターミナルを使わせてもらってありがとうございます」ヒデオは大きく伸びをしながら首をゴキゴキと鳴らした。
「ちゃんと説明すれば君も誤解されないのにね」意味深にサカキが言った。
「知られたくないことの方が多いですから、これでいいんです。二人を確実に逃がすにはこの方法しかなかったですから」
 サカキはぼんやりとヒデオの顔を見て、
「君は随分と不器用な人間だね」と寂しそうに言った。


 
 拍手してくださる方、
 ブログ村ボタンの方、
 押していただいてありがとうございます。
 追記にて、
 k.sky0blue さん、神澤さんにコメント返信があります。

>k.sky0blue さん
 コメントありがとうございます。
 僕は時々昔となんら変わっていない自分の無能ぶりにブルーになることがあります。
 変わることが正しいのか、変わらないことが貴重なのか一概に区切ることはできませんが、そのあたりは変わらないのは自分は早熟なタイプだからなんだとか、適当に理由をでっちあげてポジティブに考える方向でいいのではないでしょうか。
でっちあげるって日常ではあまり使わない表現ですよね)

>神澤さん
 コメントいつもありがとうございます。
 夢というか妄想でした。
 あまりにもあんまりな無茶ぶりに自分でもびっくり。
 僕の想像力(妄想力)にも磨きがかかってきたようです。
 深夜にスイーツを食べにくる男子は少なかろうと高をくくっていましたが、神澤さんのおっしゃる通り男子も来るかもです(深夜にスイーツを食べる男子としての意見)。
 僕としてもお隣さんには一応世話になっているので、夢でよかったです。
 
 
 
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