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 カルネアデスの板

 エイジス島に侵入したサクヤ達から連絡がきたので、ヒデオはわらび餅を食べながらターミナルの前に立ち彼女達と話していた。
『以上が、エイジス計画とアーク計画の全容……。そして、そこにあると思うけど、”箱舟”に乗ることができるメンバーのリストよ』
 テーブルの上、珍しく俯いていたコウタの前には名前がびっしりと書き込まれたファイルが置かれていた。
『ここにいる私達全員の名前も記載されているわ。加えて、収容者から二等親以内の親族の収容を認められている』
 我ながらえげつない手を考えたものだな、ヒデオは自嘲する。
 今、テーブルに置かれているリストは初めてヒデオが見たときのリストではなく、ヒデオの意見を参考に修正を加えられているものだった。
 使命感の強い神機使いは自分一人だけ助かるという選択はし辛いため、彼らをいかに賛成させるかというのがボトルネックだった。
 当然全体の統率はとれていた方が何かと都合がいいのも事実である。
 いかにして彼らの首を縦に振らせるか、それが上層部の人間が頭を痛くしている種だった。
 しかし、ヒデオにしてみれば、そんなことは簡単に解決できることである。
 その使命感を別の使命感で塗り潰してやればいい。
 自分一人だけ助かるのではなく、家族を守るためにアーク計画に乗る。
 ”家族を守るため”という大義名分があれば、力を持たない人達をアラガミから守るなんて矜持はいくらでも飛び越えられる。
『……まぁ、私とアリサはエイジスに忍び込んだことでリストから外れちゃったけど。それでも、このままいけば、あなた達は”救われる”側ってわけ。逆に私達は、極東支部からもお尋ね者にされちゃってるでしょうね』
「エイジス計画が……嘘? ……そんな、そんなことって……」コウタは顔を上げた。
 その表情からは痛いほどの衝撃を受けたことが窺えた。
 ソーマは窓際の壁にもたれかかったまま、
「……俺は元からあの男に従う気はない。それに、お前らと違って俺の身体は半分アラガミだ。そんなヤツが次の世代に残れると思うか……?」
『……それでも支部長……、貴方のお父様は、貴方もリストアップしているわ』
「知ったことか」
『改めて言っておくけど、私はこの船を認めるつもりはないの』
『ええ、私達は支部長の凶行を止めなければならない』アリサが横から口をはさんだ。『とりあえずは身を隠して、エイジスへの再侵入方法を探すつもりです』
『伝えておきたかったことは、それだけ。どうするかは、あなた達が自分で決めてね』
 パソコンの本みたいな言い方だった。”自己責任でやってね”みたいな。
『その結果、私達の敵に回ったとしても恨まないから安心して』
『邪魔するようなら、全力で排除しますけどね』
『アリサ……!』
『冗談ですよ……。でも……できればそうならないことを願っています』アリサの声は弱々しかった。
『……それじゃ、もう切るわ。後悔のないように、しっかり考えなさい』
『最後にひとつだけ』とアリサが言った。『エイジス島で私達を助けてくれたのはあなたですよね?』
「君は……僕を美化し過ぎているんじゃないかな?」それは無言の肯定。
『……いえ、今も十分ガッカリしてますよ。口の周りにきなこがついてるし』
 ヒデオは口元を袖で拭い、
「僕は”そこまでできた”人間じゃないよ」と言い、
 アリサは、
「あなたは”そこまでできる”人間です」と言った。
 サクヤ達との通信が切れた後でもコウタはソファーに座ったまま動かなかった。
「……悪い……、俺は……、アーク計画に乗るよ。もちろん、それがどういうことかってのも分かってる。でも、エイジス計画がなくなっちまった以上、他に母さん達を確実に守る方法はない。俺は、どんなことをしてでも家族を……。母さんと妹を守るって決めたんだ。ゴッドイーターになったのもそのためなんだ……。だから俺、アーク計画に乗るよ」
 コウタの眼はしっかりと未来を見ていた。
「それが正しい判断だよ」とヒデオが答える。
 そのためにヒデオはリストを書き変えたのだ。
 
 女子二人が抜けてしまったためすっかり華がなくなった第一部隊。
 最近はアラガミがめっきり減ってしまったため、サカキのラボでまったり過ごす時間が増えたヒデオ達。
 コウタとヒデオはソファーに座り、コウタはバガラリーを見てヒデオは漫画を読んでいた。
 テーブルに置かれたおやつの柿ピーのピーナッツばっかり食べるコウタに、
「つなぎの人、ピーナッツばっか食べるなよ」とヒデオは文句を言うが、
「えー、ヒデオ辛いの好きじゃん」コウタはまるで気にしていない様子。
「ばっか、こういうのは交互に食べるから美味しいんだよ」
 柿ピーに熱くなる二人だが、十五歳という年齢を考えれば別に驚くことではありませんね。
 ソーマは奥のシオの部屋でシオと二人でロミオとジュリエットごっこをしていた。
「おおろみおあなたはどおしてろみおなのー」
 サカキはシオの部屋に取り付けた監視カメラの映像を食い入るように見ていた。
 見方によっては明らかに変質者です。
「……これは、貴重な映像だ」
 ヒデオは立ち上がり本棚の前まで歩いていって漫画を戻すと、戸棚に隠しておいた(出しておくとシオに食べられる)お饅頭を手に再びソファーへと座ろうとしたとき、支部長から呼び出しがかかった。
 なんだろう、もしかして麦茶を麺つゆにすり替えたことがバレたのだろうか。
 その罰としてそれを飲まされるのだろうか。
 冷やしうどんのつゆの味がすぐ薄くなるのは何でだろうか。
 もういい、とりあえず支部長室に行こう。
 全てはそれからだ。
 ヒデオは支部長室のドアを控えめにノックして中に入った。
 今回の支部長はちゃんと服を着ていた。
 くっ! ダメだ。何で服着てないのが普通になってるんだ。
「やあ、よく来たね」支部長が出迎えてくれた。
 支部長の声に反応してヒデオの瞳が一気に臨戦態勢に切り替わる。
 加速していく紅蓮の熱が周囲から水分を奪い取っていくかのような圧倒的なオーラを放つヒデオを前にしても、支部長は気後れすることなく話し始めた。
「君や先人たちのおかげで、計画は最終段階に入りつつある。まずはその礼を言いたくてね」
 ヒデオは真っ直ぐに支部長を見据え彼に近付いて行く。
 支部長がアリサに対しやったこと、大切な仲間に大切な仲間を殺させようとしこと。
 それだけは……許すわけにはいかない。
 それを思うと怒りと憎しみがとめどなく溢れていく。
 理性の鎖を感情の炎が焼き尽くしていく。
 溶かし続けていく。
 だけれどそれを、ヒデオは抑え込むことができた。
 彼には彼の事情がある。
 サカキから見せてもらったディスク。
 それに映っていた支部長。
 その姿を思い出すと感情の高ぶりは急速に冷めていった。
「どの口が言うか、といった顔だな。サクヤ君達から連絡くらい来ているのだろう? 彼女達が指名手配となっているこの状況での君達の心中は察するよ。いまだ私が、ここアナグラでのうのうとしているということも理解しがたいだろう」
(まあ、なんとなく予想はついているんだけどね)
「言い訳はしない。今すぐここで刃を交わすことを望むならそれにも応じよう」
 ということは、ここで支部長を殺してもアーク計画は止まらないということか。
「だが、理解して欲しい。アーク計画こそが、真の地球再生と人類の保存を両立させる唯一の方法なのだ」支部長はゆっくりと壁に掛けられている嵐の海の絵の前まで歩いていき、そこで立ち止まり話を続けた。「そうだな……。例えば……、船が沈没し、君や乗員が荒れ狂う海に投げ出されたとしよう。嵐の海にはたった一枚の板が浮かんでいる……。どう考えてもその板には、二人がつかまれば沈んでしまう」
 支部長はそこでたっぷり間を取ってから、ヒデオに尋ねる。
「さて……君はどうするかね? 他の者を押しのけて、一人助かるか……」
「助かります」即答だった。
 支部長もこのヒデオの反応は意外だったようで、時間が凍りついたかのように一瞬だけ動きが止まった。
「……そうか。君なら二人ともが助かる術を考える、といった回答が帰って来ると思っていたんだがな。そうか……」
「支部長、あなたは大切なことを履き違えている。いいですか、現実の中で誰かを助けたかったなら現実の中で生きていることが前提条件だ。板につかまらず沈んでいく中で何ができますか? それに僕は自分一人が助かるとも、誰も助けないとも言ってはいない」
「……そうか。あるいは君になら任せてもいいのかもしれないな」
「何のことです?」
「いや、こっちのことだ。……君は、この”カルネアデスの板”につかまるべき人間だ。その選択は、人類の未来にとって、決して間違いではないのだよ。”箱舟”の完成まで残り僅かだ。この計画に賛同してくれるのなら、残る任務を全力で遂行して欲しい。その暁には、君と君の愛する人達を”箱舟”の乗組員として迎えようと思う。さて……君はどうする? 沈む船に残り、荒れ狂う海で朽ち果てるの待つか、それとも……ともに箱舟に乗るかね? そういえば、先程コウタくんは箱舟のチケットを受け取っていってくれたよ」
 退室しようとしていたヒデオの足が止まった。
「守るべきものを持つことで生まれる強さを、私は誇りに思う。ここで結論が出せないのならば、暫し考える猶予を与えよう。計画の発動まであと一歩なのだ。そう、あとは特異点さえ……。願わくば、”正規のチケット”を持った君と、彼の地で再開したいものだな」
 やはり支部長は……。
 これならいけるか。
 ヒデオはドアのノブに手をかけたまま、支部長に背中を向けたまま言う。
「僕があなたの忠実な剣となる代わりに、どのような状況下であったとしてもアリサとサクヤさんを箱舟に乗せると約束してくれませんか?」
「なかなか難しい要求だな。……だが、分かった、約束しよう」
 後は、もう一枚。
「それから、僕の分のチケットは当然貰います」
「それは容易いことだ」
 ヒデオはラボへと戻らず自分の部屋に帰った。
 ベッドに仰向けになってぼそぼそと呟く。
「これで保険はオーケーだな」
 
 
 
 
 拍手してくださる方、
 ありがとうございます。
 ブログ村もすごいことになってます。
 ブログ村る皆様、
 40パーセントアップのありがとうです。
 
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