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 禁忌の力

 ソーマはシオを壊れ物でも扱うようにそっと床に横たえるとヒデオの隣に並んだ。
「リンドウ、見てる? やっとここまで辿りつけたわ……、ここにいるみんなのお陰よ」サクヤが言う。
「おれ……これまでずっと、家族やみんなが安心できる居場所を誰かが作ってくれるのを待ってたんだ。でも気付いたら簡単なことだった。自分がその居場所になればいいんだって。それを作るために……、おれ戦うよ」コウタが言う。
「私も……、みんながいたから気付けたんです。こんな自分でも誰かを守れるんだ……って」とアリサ。
「おしゃべりはここまでだ……。おまえら……背中は預けたぜ!」
 支部長は、否、アルダノーヴァは身体を開きながら上昇した。
 二体で一対、見たことのないタイプのアラガミだな。
 人為的に作られたアラガミってとこか。
 ヒデオは他の第一部隊が熱くなって叫ぶ中、したたかに状況を分析し対応策を考える。
 連携攻撃をしてくると仮定するなら、どっちかを先に潰さなくてはならない。
 後ろのやつに支部長が乗ってることは確認した、ならば前の女のタイプから攻めるか。
「降り注ぐ雨を……、あふれだした贖罪の泉を止めることなどできん」
 浮かび上がった肉体を地表まで下ろし、加工された支部長の声でアルダノーヴァが言った。
「その嵐のなか、ただ一つの舟板を手にするのは……この私だ!」
 ヒデオは躊躇いなく一歩前に歩みを進めた。
「科学者ってやつは、みんな考えることって同じなんだな」
 ヒデオの顔から凍えるようにありとあらゆる感情が消えて、その後に残ったのは紅の双眸のみ。
「……どういう意……」
 支部長が問いを言い終える前に一瞬の隙を突き、急加速したヒデオはアルダノーヴァの懐に飛び込み上半身を沈めながらの左切り上げで、手前の女神タイプの方の右のこめかみに斬撃を撃ちこんだ。
 金属同士がぶつかるような甲高い音が鳴る。
 そう、一歩踏み込んだのは相手にプレッシャーを与えるためだけでなく、踏み切る足を変えるため。
「……なっ、なんだその速力は……」
 アルダノーヴァが有り得るはずのない現実に驚きヒデオから目を放したときには、既にヒデオの姿は眼前にはなかった。
 しかし、人を超えアラガミの境地へと至った支部長の感知能力は、人間の比ではない。
 そして、それが災いした。
 ヒデオに後ろを取られたことに気付き、背後を振り返ろうとしたアルダノーヴァの左肩にヒデオの神機が振り下ろされた。
 反応できるが故にフェイントを避けられない。
 ヒデオにとってはフェイントに反応しなければそのまま攻撃へ切り替えればいいだけのこと、それを理解している支部長はヒデオの誘いに乗らざるを得ない。
 接近戦は不利だと知ったアルダノーヴァは自身の周りをレーザー光線で焼き払いヒデオに距離を取らせる。
「一旦散開。各自十分な距離を取れ。防御をメインにしろ!」ヒデオは肩で息をしながら指示を飛ばす。
 攻撃をし続ける第一部隊だったが、アルダノーヴァへの目に見えるダメージはない。
 時間がない。
「アリサ、ソーマ、僕に続け。近接戦闘開始。サクヤさんとコウタはそれぞれアリサとソーマの援護を」
 間合いを詰めようとする三人に、女神タイプの後ろのやつから光弾が放たれる。
 ソーマはそれをギリギリでかわすが、アリサはそれをシールドで防御した。
 動きの止まったアリサに、アルダノーヴァは腕を伸ばし突き刺しにきた。
 完璧ともいえる連携攻撃。
 かわす方法は皆無。
「あ……」とアリサは声を上げ両目をつぶった。
「させるかよぉっ!」
 驚異的速力でアリサの前へ立ち彼女を庇う。
 棘がヒデオの左肩を穿ち血が勢いよく零れ落ちる。
「ヒ、デオ……」
 アリサは泣きそうな声で彼女の前に立ち塞がり盾となった少年の名を呼ぶ。
「君はもう限界だ下がれ」
「ヒデオ」
「いいから下がれ」
 アリサの頭の中にリンドウのときのことがよぎったのかもしれない。
 そのときに下したヒデオの判断は撤退だった。
 それはヒデオが正しいと思い選択したものなのだ。
 それなら今退くことは最善の判断だということ。
 アリサは後退した。
 ソーマ、コウタ、サクヤも限界が近かった。
 このままチームで戦ってもこっちがジリ貧か。
 ヒデオは数秒逡巡してから、
「三人とも後退、シオと博士も連れて安全地帯まで下がってくれ」
 その指示に、
「相手は俺の親父なんだ。こいつは俺が止める」
「ヒデオ、一人でじゃ無理だろ。無茶を言うなよ」
「そうよ、君一人が頑張らなくてもいい。私達は仲間なんだから」三人が三人とも異を唱える。
 だったらなおさら一人でやるしかない。
「大丈夫、すぐに終わらせてやるさ」
「たいそうな口を利くんだな。人間如きが」
 ヒデオが神機を構えると、
「もう、あんな奇襲は喰らわない。かわせるものならかわしてみろ」
 アルダノーヴァは広範囲に拡散ビームを放つが、その光のカーテンを突き抜けて黒い影が一つ現れ、油断していた女神タイプの顎に切り上げがまともに入った。
 突然の衝撃にアルダノーヴァがぐらぐらと揺れる。
「奇をてらうから奇襲っていうんだよ」
 しかし、アルダノーヴァはまだ理解できない。
 眼前で起こった現象に頭が追いつかない。
「なぜだ、どんなに速かろうともあれだけの攻撃、かわすことなどできるわけがない」
「かわしてないさ。あんたが広範囲に拡散型の攻撃をしてくるのが分かったから、無理やり突破した」
「だが、いくら拡散して威力が落ちているとは言っても、人間如きに耐えられるはずがない」
「そう、人間なら耐えられない」
 そう言ってヒデオは右の上着の袖を少しまくった。
 その下にあったのは、人間の腕ではなかった。
「この身体の強度はあんたが一番知っているだろ?」
「まさか……、君は自分の身体を……。ペイラーか? まさか、ペイラーが……」
「嫌がる彼に無理やりお願いしたよ」
「なぜ、なぜ、そんなことを……」
「大切なものを守りたかったから」ヒデオは静かに答えた。
「だが、資金はどうした? 設備はどうした? 開発基盤となるベースの製作には一支部まるまる運営するくらいの費用がかかるはずだ、それをどうやって……」
「その答えは簡単だ。フェンリル東欧支部を知っていますか? フェンリル東欧支部が何をやっていたか知っていますか? 表向きはアラガミ化の進んだ神機使いの治療を行うための研究。でもその裏、実態はアラガミ化の制御。オラクル細胞の人為的開発。あなたみたいなのを作る研究ですね。そして僕は……そのフェンリル東欧支部の唯一の生き残りにしてそのサンプル。成功個体にしてベースだということ」
 支部長はしばし沈黙していた。
 アルダノーヴァの破壊衝動を理性で抑え込んでいるようだった。
「君はどうして……」
「まあ、話はそのくらいにしておいて……、始めましょうか。お互い時間がない」
 博士はアラガミ化活性剤を打ってから五分以内に抑制剤を打てと言っていた。
 それ以上は肉体が持たないそうだ。
 正規の開発を受けている僕が五分しか持たないのなら、単独での開発をしている支部長は最長でも五分。
 おそらく、それより短い時間で彼の身体は崩壊してしまうだろう。
 時間がない。
 彼を死なせたくないのならば、たったそれだけの時間で彼を倒し、アルダノーヴァから引っぺがさなければならない。
 そのために皆が彼と話している間に活性剤を打った。
 重要な会話中こそ準備をする時間なのである。
 しかし、運命は残酷に時を告げる。
 腕輪のタイマーがピピピ、と鳴った。


 
 
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