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 始まりの場所

 時間は少し遡る。
 ヒデオはツバキとアリサを自分の部屋へ呼びつけていた。
「何の用だ?」
「言いたい事があるってなんでしょうか?」
 二人の声を背中に受けて、ベッドに腰かけていたヒデオは青白い顔で振り向いた。
「えーと、適当に座ってください」
 ヒデオもベッドから立ち上がり二人と一緒にソファーに座る。
 アリサとツバキが並んで座り、ヒデオは向かいのソファーに位置する。
「今日、お呼びしたのはお二人に聞いて欲しい話があったからです」
「何の話だ? 私とアリサにしか言えない話なのか?」
 アリサも頷く。
「その通りです。今後、おそらく支部長と戦わなければならない状況に僕達は立たされるでしょう。ですから、僕の身元引受人であるツバキさんと、感応現象で僕の過去を覗いたアリサにはこの話をしておきたいと思っただけです。どちらかと言えばそれは感傷的な動機ですかね」
「何の話なんですか?」興味心身に食い付くアリサ。
「とある少年の昔話です」

 最初に憶えているのは灰色の壁と鉄格子。
 凍える大地に僕達は生を享けた。
 僕達は十数人ごとにケージに隔離され、生きるという絶望と死ぬという滅亡を待つだけの存在だった。
 フェンリル東欧支部は研究者と神機使いのみで構成されており、アナグラに住んでいる人々もまた研究者か神機使いだった。
 しかし、これには若干の語弊がある。
 あくまでそれは、”人間”に限った表現で、実際には僕達”サンプル”も住んでいた。
 あるいは”住んでいる”のは人間で(人体実験を何の躊躇いもなくするような人間を人間と呼んでいいのかというのはまた別の問題だが)、僕達サンプルはあくまで”飼われていた”のかもしれない。
 閉じ込められていたのは物心ついたばかりの子供から、二十代半ばの若者で皆患者衣を着ていた。
 教育らしい教育はされなかったが、大抵のことは同じケージの年長者が教えてくれた。
 外の世界のこと。
 僕達を待っているもの。
 この閉塞された状況で希望なんてものは一縷もなく、決定的で致命的な終わりがあるだけだということ。
 それでも、僕が生きてこれたのはやはり仲間の存在があったからだった。
 仲間達がいなければ僕はとうの昔に生きる権利を放棄していただろう。
 最も、彼らが善意で僕達を寄せ集めたわけではない。
 その方が管理がしやすいからそうした、ただそれだけだ。
 毎日、何人かがケージから出されて連れていかれた。
 中には戻ってこない姿もあった。
 一人また一人と日に日に仲間が少なくなっていく。
 向かい側のケージの中で少女がもだえ苦しんでいる。
 一体、……一体僕は彼女に何と言えばいいのだろうか。
 だが、そんな地獄でもまだ僕は、救われている方だった。
 僕のいるケージではあまり仲間は死ななかった。
 僕の入れられているケージは平均年齢が二十歳くらいで、それ故に僕は他の子ども達よりも高度なことを教えてもらえた。
 何かを学べば学ぶほど自分の未来に絶望したが、勉強している間はそんな鎖から解き放たれたかのように己の世界に没入することができた。
 しかし、ある日のことだった。
 ケージのリーダーだった女性が連れていかれる少し前に僕に言った。
「このケージは生き残り組のケージだ。運良く、いや、運悪くかな。何度かの”実験”を通り抜けられた者が入れられるケージなんだ。だから平均年齢が高いのさ。そんな中に君のような……。君はいくつだったか?」
「八歳です」
「そう、八歳という異例の早さで君が入れられた。これは明らかに異常事態だよ。こんなことは言いたくはない、本当に言いたくはないんだ。だが、私もこれでリーダーだ。言うべきことは言わなければならない」
 僕は唾を飲み込んだ。
「君は早く自殺した方がいい。奴らは今は傍観しているだけだが、近い将来、君は絶対に奴らの玩具にされるよ」
 でも、と僕は間を開ける。
「もしも、彼らが僕が自殺するとみんなを殺すと脅しをかけてきたら……。最近気付いてしまったんです。この十数人を同じケージに入れる意味が。これは仲間意識を芽生えさせ、仲間を人質として利用するためのシステムだってことが」
「君は聡い子だな。たとえそうだったとしても、それでも自分を優先させていいんだ。私達は全員が死んでもデメリットはないのだから」
 彼女は諦観の念でため息を吐いた。
「そろそろ私の番のようだ。実は身体がガタガタでね、もう立ち上がることさえままならないんだよ」
 僕は彼女の手を握り、
「そんな……ことは、言わないでください」と言った。
 彼女の手は恐ろしく冷たかった。
 そして、彼女は言葉通りに二度と戻ってはこなかった。
 
 
 
 
 拍手してくださる方、
 ありがとうございます。
 追記にて、
 yuzuyjkjさんにコメント返信があります。

>yuzuyikiさん
 ありがとうございます。
 ガチの文章力勝負を避けネタに走った男にはもったいないお言葉です。
 ブログの記事作りという観点から見ると戦術的には間違ってはいない、と思う僕の策戦ですが、自分より若い人が素晴らしい文章を書いているのを見ると、敗北感がハンパないです。
 僕が憧れるのは礼節をわきまえたブログの管理人さんです。
 
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09/08|ゴッドイーターコメント(2)トラックバック(0)TOP↑
この記事にコメント
ゴットイーターって
すごく面白そうですねww(今更


髪型の件w
メガネかけてるのに
髪ツンツンの俺はやっぱおかしいかと
心の隅で思ってry
From: HIROKI * 2011/09/08 17:18 * URL * [Edit] *  top↑
こんばんは!!

ユーモアのセンスも有り、文才も有り、すばらしいじゃないですか。応援してますよ。

私は、全くですが・・・
From: yuzuyjkj * 2011/09/08 22:26 * URL * [Edit] *  top↑
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