上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--|スポンサー広告||TOP↑
 夢の終わりと現実の始まり

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。
 あの日僕の中の時計は止まってしまった。
 彼らがああいった手を打ってくることは十分に予測の範囲内だったし、彼らがそういった手に出てくるのは予想の範疇だったはずなのに。
 僕は何を……期待していたのだろう。
 彼女を殺したときにできた胸に開いた空白が僕を怯えさせる。
 怖くて怖くてたまらない。
 だから僕はその恐怖から意識を遠ざけるために己を殺し、心を殺し、アラガミを殺し続けた。
 それが元仲間かどうかなんて考える余裕はもう僕にはない。
 僕はただ目の前にいる敵を殺すだけだ。
 もとより、罪悪は算数ではない。
 一人殺すも、二人殺すも、何百人殺すも背負う十字架の数が違うだけで重さは大して変わらない。
 靴音が聞こえる。
 僕は毛布をかぶったまま両膝を抱えながら素早く反応しドアの方視線を移す。
 ノックがされ、アネットさんが入ってきた。
「ヒデオ君、最近実験の成果がすごいじゃない。初めてのときとは比べ物にならないくらいのデータが取れてるわよ」
 僕は伽藍堂の心で言葉を聞き流す。
「って、調子は最悪みたいね。少し休息期間を取れるように博士に進言しておくね」
「……いえ、こうしてじっとしているより、戦っていた方が楽です」僕は震える手で膝を抱え歯をガチガチ鳴らしながらそう言った。
「ありゃ、これは重症だわ。ちょっと行ってくるからご飯はちゃんと食べておいてね」
 僕は食事には手をつけずにベッドに横になった。
 天井がぐるぐる回る。
 手の匂いを嗅いでみると血の匂いがした。
 アネットさんの靴音がして、彼女が戻ってきた。
 彼女が押してきたワゴンには銀のトレイが乗っていて、何本かの注射器があった。
「随分あっさり許可が下りたけど、やっぱりあなたは特別なのかしら」
「でも僕としては、普通の方が良かった。どうしてですかね。夢を見るんです。アラガミと戦う夢なんですけどね、何十というアラガミを倒してふと振り返ると、それが全部仲間達だったっていう夢で、本当に全然笑えないですよね。僕は夢の中でもそんなことをやっているんです」
「まあ、暗くなっててもいいことはない。もっと前向きに物事を考えよう」
「前ってどっちなんでしょうね」
「ヤバい、これは重体だわ」と言ってアネットさんは注射の準備を始めた。「大丈夫、次に目が覚めたときには少しは楽になっているはずよ」
 僕は彼女に言われるままに腕を差し出し、注射を打たれる。
 痛みは何も感じなかった。
 程なくして泥のような眠りに僕は落ちて行った。
 そして、次に目覚めたときには、アネットさんの言葉とは対極の事態が僕を待っていた。
 銃声と爆音と悲鳴と血の匂い。
 僕を揺り起こしたアネットさんも血にまみれていた。
 彼女の姿を目の端で捉えた僕の意識が急速にクリアになっていく。
「どうしたんですか? 何かあったんですか?」
「ちょっとテロられたって言うか、白い悪魔が襲撃してきた感じ」
 僕は彼女の傷口を両手で止血しながら、
「そ、そんなっ……」と言葉につまる。
「……でも、……良かった。これでみんな自由になれる」
「良くないよ、これのどこがいいって言うんだ。……くそっ! 止まれよ血」
「私も結局科学者で、あなた達のことを実験材料として見ていたんだよ……。だから、これで良かった。こんな結末で良かった」
 彼女のぼろぼろの身体に僕はぼろぼろと涙を流す。
「……、これ……神機のキー……。これから……じゆ……うに……生き……て……」
 アネットさんはそう言って息を引き取った。
 僕は彼女をベッドに横たえると両手を組ませ瞼を閉じさせた。
 彼女の白衣は血に染まり、僕の瞳は緋に染まった。
 僕はアネットさんから受け取ったキーを手に神機を取りに行った。
 途中、誰とも会わなかった。
 どういうことだ。
 アネットさんが死んだにもかかわらず冷静に状況を分析している自分に自己嫌悪しながら、通路を走り抜け神機を回収し、彼女の血痕を辿って階段を上って行く。
 僕の読みが正しいならこの先に博士がいるはずだ。
 僕は彼を許す気はない。
 銃声と悲鳴が次第に大きくなって戦闘区画が近付いていることを知らせてくれる。
 突き当りのドアを蹴破って中に入るとそこは地獄と化していた。
 白い悪魔は舞うように優雅にそれでいて無駄の一切ない動きでアラガミを消し、神機使いを潰し、研究員を殺していく。
 そのあまりの美しさに一瞬、見惚れてしまった。
「ガキどもは全員使ってしまって構わん。ベースさえいれば研究は続けられる。奴と戦わせて時間を稼げ。避難はまだ出来んのかっ!」
 ハカセガイタ。
 目の前が真っ赤に染まり、憎しみが噴出していく。
 止めれない、止められない。
 神機の柄がみしみしと軋んだ。
 しかし、突然背筋が凍った。
 白い悪魔のような青年がこちらを見ていた。
 そして、疾駆して向かってくる。
「おい、あの女を殺したのは奴だ。お前も仇は取りたいだろ……」
「それをあんたが言うかよ」
 僕は迷いなく躊躇いなく博士を斬殺した。
 その間に白い悪魔は他の研究員達を殺していた。
「あとはお前一人だ」
「だからなんです?」
 青年は唇を悔しそうに歪めて、
「悪いな、お前一人しか助けられなかった。他の仲間はやむを得なかったといえ俺が殺した。すまない」そう言った。
 いいえ、と僕は首を振る。
「僕も仲間を殺したことがありますから、事情は分かるつもりです」
 青年はそうか、と言って、
「ジジイの言ってたその女の人殺したのが俺かもしれないのにか?」
「彼女の傷は銃によるものです。あなたの神機のバスターブレードとは違う。大方僕のとこに来る途中で撃たれたんでしょう。殺したっていうのなら僕が殺したようなものです」
「そうか……。お前は俺が怖くないのか? この支部を全滅させたのは俺だぜ?」
「あなたは殺す相手と殺さない相手をきちんと区別している。僕と相対したときあなたはまず僕の左手首のバンドを見た。これはあなたが僕達サンプルと研究員や神機使いを区別しているということです。だからあなたは僕の仲間を殺したと言った」
「坊主、お前いくつだ?」
「八歳です」
 それがどれだけ異常なことなのか彼にも容易に想像ができただろう。
「ほんっと、悪かったなあ、もっと早くに助けてやれなくて……」
 彼は唇を噛み締める。
 血が滲んでいた。
「いいえ……。それはあなたのせいではない。それに僕達には、こういう終わり方しかなかったのかもしれません」
 僕はその後、この支部で行われていた研究のデータをコピーしてからコンピュータを全て破壊した。
 これでもう、僕達のような目にあう子ども達はいなくなるはずだ。
 こんな研究は二度と起こさせてはいけない。
 そんな一連の作業が終わってから、
「坊主はこれからいくとこあるのか、ってあるわけないか。まあ、あれだ、しばらくは俺が面倒みてやるよ」と彼が言ってくれたのは素直に嬉しかった。
 それは夢の終わりのようで現実の始まりのようだった。

 
 
 拍手してくださる方、
 ありがとうございます。
 追記にて、
 NC Muroさんにコメント返信があります。

>NC Muroさん
 コメントありがとうございます。
 顧問の先生の話なのですが、一応作中のキャラということで多少極端に設定してあります。
 NC Muroさんのような印象を抱いてもらえるのは書き手としては非常に嬉しいですし、文字による情報の伝達なので言いたい事が同じ言葉でも伝わらなかったりとかすると思うので、言い過ぎたりしても全然構わないと思います。
 自分の書いたものに対して反応してもらえるというだけで、それは感謝の対象になると僕は思っていますし。
 だがしかし、この話には元ネタが存在した。
 僕も元文芸部なのですが、作品を顧問の先生に渡し数週間後に感想会みたいになった際に、「僕にはそれを読む義務はない」とか言われたことがあります。
 それは確かにいつかどこかで誰かに言われなければいけない言葉だとは思うのですが、そんなストレートに言うかと呆れました。
 仕事で教師をしているのだからしょうがないと言えばしょうがないのかもしれませんが、その後顧問との心の距離が広がりました。
 僕が一人で多くのものを期待していたのが間違いだったのかもしれませんが、あれは本当に悲しかった。
 そういう意味では現在のブログのみんなに見てもらえるというのは幸福みたいです。
 まさか、これが狙いだったのか。
 でもやっぱり、曖昧な言い方とかして欲しかったなあ。
 
 
スポンサーサイト
09/25|ゴッドイーターコメント(1)トラックバック(0)TOP↑
この記事にコメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
From:  * 2011/09/25 23:57 *  * [Edit] *  top↑
名前:
コメントタイトル:
メールアドレス:
URL:
コメント:

パスワード:
管理人だけに表示:
管理者にだけ表示を許可
この記事にトラックバック
FC2カウンター
現在の閲覧者数
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ドラクエ風xxxがあがった!
flash boreal kiss
プロフィール

トキワ

Author:トキワ
FC2ブログへようこそ!
にほんブログ村 その他日記ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

フリーエリア


ダンジョンRPG検定

最新記事
最新コメント
仁王立ちだZE★霧雨魔理沙
【東方】博麗ちゃんの賽銭箱
十六夜咲夜の大きな懐中時計
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
インなんとか
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム
QRコード
QRコード
最新トラックバック
地球の名言

presented by 地球の名言
黒メイド時計
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。