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 継がれる想い

 ぼやけた意識の中でヒデオは注射器を手にした。
 右腕の感覚がまるでないので代わりに左手で注射を打つ。
 薬剤が血流にのって身体の隅まで行きわたると、今までバラバラだった思考回路が少しずつ回復していき、自分が立たされている状況を把握することができるようになった。
 それでも、床に倒れていることがひどく魅力的で立ち上がる意思を持てない。
 しばらくするとアリサに次いで他の第一部隊の面々も結局戻ってきた。
 みんなバカばかりだ。
 人の気も知らないで勝手なことをして。
「ファウストさん……」
 思わず彼の名を呼んだ。
 ヒデオはボロボロの身体とボロボロの心で精一杯笑った。
 支部長の膝が折れ今度は彼の倒れる番だった。
「ば、ばかな……この私が……」支部長は苦しそうに首を押さえて、「人の業からも目を背けるこんな愚か者どもに、敗れるなど……」
 ごほっと咳き込み身体を痙攣させると支部長は顔から地面に崩れ落ちた。
 コウタがノヴァの方を見ながら、
「はあはあはあ、畜生、あのデカブツ……、止まらないよ!」と言う。
「いったい、どうしたら……」
「あきらめないで! きっと何か……何か方法があるはずよ!」
 戸惑うアリサにサクヤが檄を飛ばすが、彼女自身も不安からか声が震えていた。
「ふ…ふふ…無駄だ。覚醒したノヴァは、止まらない……」
「この私が珍しく断言する……不可能です」
 支部長の不遜な発言にサカキも同意した。
「何とかならねえのか博士!」ソーマがサカキに訊く。
「残念だが支部長の言った通りだよ……」
 サカキも諦観の念で首を振った。
「あふれだした泉は……、ノヴァが止まることは……ない」
「そんな!」
「アラガミの行きつく先、星の再生。やはりこのシステムに抗うことはできないようだ……」
「ふざけるな!! そんな事、認めねえぞ!!」
「……そう。それでいいのだ。ソーマ、お前たちは…早く、箱舟に……」
「支部長……あなた……もう!」サクヤが言う。
「……余計な心配は無用だ……。もとよりあの船に私の席は…」
「それがあるんだよなぁ」
 神機を支えにして立ちあがったヒデオはいつも通りの不敵な笑みを浮かべてそう言った。
 指に挟んだチケットをひらつかせて見せる。
「僕が持ってるチケットは二枚。普通に貰えたやつとあんたから特別に貰ったやつ。僕は二枚のチケットを持ってるんだよな」
「あれは君の知人にでも渡したのではなかったのか?」
「言ってなかったけ? 助かるなら……二人ともだって」
「ヒデオ君、君はどこまで……。だが、残念だが君の好意に私は応えられない。私の席はないんだよ」
「支部長、どうして……」サクヤが訊いた。
「フフ……、世界にこれだけの犠牲を強いた私だ。次の世界を見る資格など無い。後はお前達の……仕事だ……フフ、適任だろう?」
「それをあんたに強いたのは世界の方じゃないかっ! あの痛みも、あの悲しみも、あの辛さも、あの苦しみも、全部あんたがみんなの未来のために一人で抱え込んだんじゃないか」
 ヒデオはかぶりを振る。
 その瞳はいつになく澄んだ緋色の輝きを放つ。
 まるで命を燃料にして燃えているかのように。
 支部長はヒデオの言葉を呑みほして、
「君は、本当に……。できることなら、私も君と同じ世代に生まれたかったよ」そう溢した。
「親父……」
「アイーシャ、すまない。私達は結局こんな争いの先にしか答えを探せなかった。私達は、君に償えたといえるのだろうか……」
「母さん……ノゾミ、ごめん……約束守れなかった」
「終わらせない。こんな結末は認めない」ヒデオは呟いた。
 変わりたいと思った。
 変わりたいと願った。
 変われるだろうと思った。
 変われるだろうと信じた。
 ヒデオは支部長を取り込んだアラガミの中に無造作に右腕を突っ込む。
 その瞬間、今まで何も感じなかった右腕に、強塩基の液体に触れ溶け出したかのような痛みが走る。
「はああああああっ!」
 それでもヒデオは歯を食いしばり支部長の身体を外へと引きずり出した。
 はあはあ、と息を切らせながらヒデオは支部長の顔を覗き込む。
「最後に君のような人間に出会えて良かった……」
 支部長は微笑みながら息を引き取った。
「……支部長……」とヒデオは彼の手を掴んで「あなたの想いは僕が継ぎます」と言った。
 後はノヴァのほ……ほ、ほ……。
 ヒデオの頭と身体が電池の切れたおもちゃのように停止した。
 ぐしゃり、と倒れる。
 限界だった。
 今まで無理に無理を重ねてきた身体が、そのつけに音をあげた。
 目の前が真っ赤になる。
 誰かに名前を呼ばれたような気がしたが、誰に呼ばれたのかは分からなかった。
 そこで僕の記憶は終わっている。
 その先は分からない。


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