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 揺るがないもの、譲れないもの

 突如出現したアラガミ、アルダノーヴァの急襲により、旧日本近海に建設中だったエイジス島は半壊、同日、エイジス計画を強力に推進していた当時の極東支部支部長、ヨハネス・フォン・シックザールが、エイジスの崩落事故により死亡。
 フェンリル本部によるそんな「公式見解」と共にアーク計画は粛々と闇に葬られた。

 あの戦い、否、敗北から一カ月が過ぎた。
 支部長との戦闘で受けた傷は大きく、ヒデオでも傷を癒すのにそれだけの時間がかかった。
 全身に転移したオラクル細胞の摘出、大量の薬剤投与、中でも特に汚染の酷かった右腕は切断しなければならなかった。
 病室のベッドの上で、ヒデオは甲殻類が纏った殻を身体に馴染ませるように何度か義手の拳を握ったり開いたりしてみた。
 違和感はない。
 病室のドアがノックされサカキがアリサを伴って入ってきた。
「腕の調子はどうだい?」サカキが尋ねる。
「日常生活で使う分には問題ないですね。部隊に復帰するにはもう少し時間がかかるかもしれませんが」
「生体義手は拒絶反応が出ることが多いけれど、君に関しては余計な心配だったね。オラクル細胞をコントロールしている人間にその程度の拒絶反応を押さえられないはずがない」
 アリサは大きくため息をつくと、
「まったく、あなたは復帰するつもりなんですか? 呆れちゃいますよ。見た目の傷は治ったかもしれませんが、中身の方はボロボロなことくらい私でも分かります。ちゃんと休まないといけないですよ」と言った。「それに博士もなにさらっと流してるんですか」
「彼に何を言っても止められないことは分かっているからね。私は私にできることをするだけだよ」
「そうかもしれませんけど、でも……」
「少し、一人にさせてもらえませんか」ヒデオは神妙な顔つきでそう言った。
「……ヒデオ……」アリサが心配そうにヒデオの顔を覗き込む。
「大丈夫だから」
「ああ、今日はあの日だったね。すまない、出直してくるよ」
 サカキはアリサを連れて病室から出て行った。
「潰してやるさ、どんな手を使ってでも」ぽつりと呟いてヒデオは両目を閉じた。

 ヒデオはフェンリル上層部の人間と対談をしていた。
「今日皆さんに集まってもらったのは他でもない、アーク計画についてお話ししなければならないことができたからです。端的に言って、アーク計画を凍結する必要が生じました」
 ヒデオ以外のメンバーが怪訝そうな顔をする。
「君は、アーク計画支持派ではなかったのかね?」上層部の一人がヒデオに訊いた。
「はい。僕はアーク計画支持派です。だからこそ、凍結の必要性を主張します」
「どういうことかね?」
 ヒデオの目がついっと狭まる。
 その隙間から覗くのは血よりも昏い赤。
「これはまだ公式には発表していないことなのですが、アラガミの中には人間に寄生したり、擬態するタイプのものが存在することが明らかになりました。僕がこの目で確認したのでこれは確かな情報です。現在のところ、人間かそうでないのか判別する手段はありません。僕の遭遇例は暴走した神機使いを処理した際にたまたま分かっただけで、あくまで“殺してみた結果そうだった“だけです」
「ならばなおさら計画を急がねばならんのではないか?」太った男が髭を擦りながら言った。
「いいえ、そうはいきません。考えてみてください、アラガミと同じ船に乗るということはアラガミと同じ密室に閉じ込められるのと同義です」
「だが、こちらにも神機使いは山ほどいるだろ? 殲滅は難しくはない」
「確かにアラガミ自体を倒すのは難しくないかもしれません。しかし、場所は宇宙船の中です。隔壁に一つでも穴が開けられればアウトです」
「そんなもん確率たいしたことないだろ?」
 金髪の眼鏡をかけた青年が挑発的に言った。
「第一、お前が見ただけで物的証拠なんてないしな。ここまで計画を進めるのは結構骨が折れたんだぜ、そんな簡単に中止できるわけないだろ」
 この男は前の対談のときはいなかった。
 大方僕と同じで他人を蹴落として出世したタイプか。
 なかなかのリアリストのようだが、こっちだって一カ月間何もせず過ごしてきたわけじゃない。
 リアリストなら現実を現実で上書きされれば認めざるを得ないはずだ。
「物的証拠ならあります」
 ヒデオは挑戦的にそう言って、持ってきたギターケースのようなものを開け、中から透明な立体を取りだした。
 中心には人の腕のようなものが封じられている。
「これは……」
「遭遇時に採取したアラガミの身体の一部です。だいぶ変異してしまっているのでDNAを調べても個人を特定することはできないでしょう。元人間だったことくらいは分かると思いますが」
 勿論、そんなアラガミがいるというのはヒデオの嘘である。
 腕は支部長のものだ。
 ヒデオは挑戦的に金髪青年に笑いかける。
 彼はおそらく他の上層部の人間から好かれてはいないだろう。
 故にここで叩いておく。
 人は共通の敵を作ることで容易に一致団結できる。
 せいぜい利用させてもらおうか。
「それに一パーセントでも可能性があるのならその一パーセントを埋めてから計画を実行すべきです。人の命に代えはありませんし、計画の実行自体はそれほど時間はかかりません。アナグラにいれば時間稼ぎの”餌”にも事欠きませんから」
 ヒデオは意地が悪そうににやにやと笑ったが、握りしめられた拳はふるふると震えていた。
「いいですか、一番大切なのは皆さんの命です。それは僕にとってもです。ここまでの関係を築けたのに今それを失うのは痛すぎる」

 上層部の人間達が集まりぼそぼそと何か相談しだした。
 ヒデオは黙っていた。
 胸が杭でも打たれたように痛かったけれど、それを悔いることもそれを撃たれることもそれを悼むことも今の自分には許されない。
 僕はどんな手を使ってでも……。
「やはり彼が妥当なのでは……」
「確かに彼以上に我々に有益な人物はいない……」
「しかし、十五歳というのはあまりにも……」
「重要なのは年齢よりも思想だろう……」
 やがて相談が終ったらしく、一同が席に戻った。
「ヒデオ君、君をフェンリル極東支部の支部長に任命する」上層部の一人がそう言った。
「十五歳で支部長というのは異例中の異例、特異中の特異だが、君の功績と能力から判断し十分に支部長が務まると我々の意見が一致した。君にはシックザール前支部長の後任として働いてもらいたい」
「しかし……」
「心配しなくていい。支部長になればかなりの権限を表側で発揮できるさ」
「おいおいあんたら、そんなにそこのガキ信用していいのかよ?」金髪の青年は言う。
 一人くらいは否定的な奴がいた方が自然なのでヒデオはあえて反論しない。
 男の一人は鼻で笑うと、
「君よりは信用できるさ」と言った。
 周りの何人かが笑う。
 この流れを使わない手はない。
「しかし、彼のように否定的な意見を持つものも少なくはないと思います。要らぬ嫉妬を買うかもしれませんし、そうなると皆さんに迷惑がかかるのではないでしょうか?」
「それは問題ないさ。君が我々の下で働いてくれてからは一度も失敗したことはないし、他のものもその事実を否定することはできまい。なにより、君と敵対したいと思うものも今ではいまい」
「そうですか。なら権限だけいただきます」
「支部長の座だけでは不満かね?」
「いえ、そうではなく、戦場から離れたくないだけです」
「どういうことだ?」
「これまで通り僕を第一部隊隊長として扱ってください。これは白い悪魔対策です。僕なら奴を倒せると思いますが、というより僕ぐらいしか奴に勝てる者はいないでしょう。しかし、平和ボケしてしまって勝てる相手ではないでしょうし、監察官の役目も同時に果たせますから」
「相変わらずえげつないな、君は」
「それぐらいが丁度いいよ」
「では、表向きはペイラー君を支部長にすることにしよう」
「シックザール君は随分頭の固い男だったが、君はもの分かりはいい方だろう。期待しているよ」
「ありがとうございます」
 ヒデオは一礼すると退室した。
 ベテラン区画の自販機の前でへたり込みながらしるこを飲んでいるとサカキに出会った。
「かなり参っているようだね」
「支部長はほんとにすごい人ですね。こんな思いをしてまで、誰かを救おうとした」
「それは君も同じだろう?」
 ヒデオは曖昧に笑った。
 しるこをがぶ飲みし、大量の糖分を取っても苦さがとれない。
 何でこんなに苦いんだろう。
「支部長と出会って、戦って、なんとなくだけど自分が求めていたものが分かった気がしたんです。これから先、迷うことも行き詰ることもあるかもしれない。それでも、諦めることだけはしない」ヒデオは立ち上がると、「もう行きます」と言った。
「君はひどく不器用だね」とサカキは言った。
 


 
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11/07|ゴッドイーターコメント(1)トラックバック(0)TOP↑
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12600踏んだぜwww



ということで、イフォリンです☆


うまいなww
私にその力をくれぇーーーーーーーーーー


このブログへは、毎週木曜日に遊びに来ます><
☆イフォリン☆
From: イフォリン * 2011/11/10 23:37 * URL * [Edit] *  top↑
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